【登場人物】
小児科医11年目、小児神経専門医 H先生
小児科11年目、小児科専門医 K先生
小児科レジデント(研修医)1年目 F先生
アレルギー医・ほむほむ
■ 2020/5/18 多忙な業務が落ち着いた夕方……。
いつものショート・ディスカッションを、スマホの音声変換機能で収録してみようと試みる4名が集まった!
ほむほむ
これでもう始まってるんだろうか?
お、結構正確ですね
K先生
改行もできるの?あ、できないんだ
H先生
音声認識するのに、時間の制限がありそうですね
F先生
ほむほむ
ずっとこんな前振りばっかりで終わりそうな気がしてきたんだけど
この声、届いていますかー?
K先生
ほむほむ
…それではこれを記録として残すつもりでやってみますね。録音されてるとこっちも緊張しますね
ほむほむ
さて、(今後アレルギーを専門にしようとしている)K先生には、外来の終わりにどんな質問ありますかって毎回聞くんだけど、それをここでちょっと録音しながらやろうという企画なんです。よろしくお願いします。じゃあ、今日の質問を!
■K先生、ほむほむにたずねる。
そうですね…2歳とかで吸入ステロイド薬を使う場合、ネブライザーとスペーサーをどっちにしますか?
K先生
【ほむほむ注】
ネブライザーは、救急外来などでよくおこなわれる、『液状の薬を霧状にして吸入する』方法、スペーサーは、ガスボンベタイプの吸入薬を吸うためにつかう補助器具です。
↓スペーサーの例↓
ほむほむ
F先生だったらどうしますか?
ご家族のキャラクターと親御さんにお聞きして決めると思います。 ネブライザーとスペーサーで差があるかは分からないです。
F先生
ほむほむ
このテーマへの答えはなかなか難しいですね。たしかに、ネブライザーって、結構つづけていくのが難しいですよね。
忙しいとなかなかできなかったりしますもんね。
H先生
ほむほむ
研究結果としては、少なくとも救急外来というセッティングでの気管支拡張薬の吸入だと、スペーサーで吸入しても、ネブライザーで吸入しても効果は差がないっていう報告があるんですよね(※)。※Cochrane Database Syst Rev 2013:Cd000052.
どっちでもいいってことですか?
K先生
ほむほむ
うーん、僕はそうともいえないんじゃないかと思ってるんですよね。 2002年にフルチカゾン(フルタイド)吸入薬が子どもにも保険適用となって、それでまず喘息の死亡率がどんどん少なくなってきたんだけど、0~4歳の死亡数はむしろ上がった時期があったんです。そこにブデソニド懸濁液(パルミコート)が処方できるようになって、最近になって子どもの喘息死亡数はゼロになったわけです。そういった意味ではネブライザーは普段の治療としてはいいんじゃないかなあと思っています
【厚生労働省統計より引用】
なるほど……。
K先生
でも、ネブライザーって手間かかるし、大変ですよね。
F先生
ほむほむ
そうだね。そういう話が出てくるんだけど、実際に毎日やっていく部分で 定量噴霧式(+スペーサー)でうまくいくかと言うとあまりうまくいってないような印象のある患者さんが、やっぱり出てくるんですね。だから、患者さんの負担感を考えながら、コントロールがうまくいかないときは適宜変更するといいのではないかと思います。
そうか、さじかげんかあ。
F先生
■ステロイドのきもちと、ダイエットのきもち。
吸入ステロイドって、アドヒアランスがあまり良くない割に、亡くなる方はそんなに減るんですね?
H先生
ほむほむ
吸入ステロイドって、本当にすごく強力な薬なんですよね。環境整備とかそういう努力のあるなしを全部打ち消してしまうぐらい強力っていうのがあって。とはいっても、吸入ステロイドばかり使えばいいというわけではないですけどね。わずかながら、最終的な身長が低くなる可能性もあるからね(※)。※N. Engl. J. Med. 2012; 367: 904–12.
なるほど。では、患者さんにあまり治療意欲がなく、悪化したときだけ薬を使う方とかはどうすればいいんでしょう?
H先生
ほむほむ
悪化したときに治療をするというのは、行動科学的な視点で考えれば、強化されやすい行動なんですよね。
行動が強化されやすい……。
F先生
ほむほむ
ある行動をした後にその直後にその人にとっていいことがあると、その直前の行動が強化されるんですね。だから、例えばアトピー性皮膚炎があって、皮膚が悪化したときにその時だけステロイド軟膏を塗るという行動は強化されやすいし、喘息発作があったときの気管支拡張薬も頼りがちになりがちなんです。ステロイド外用薬を塗れば、一時的にでも改善するし、吸入をすると一旦楽になるものね。
ふむふむ…
H先生
ほむほむ
そして、すでにきれいになってからの毎日保湿を塗る行動は強化されにくいものだし、毎日のステロイド吸入はやめがちなんだ。これは僕みたいにダイエット毎回失敗するような人にはよく分かるんですね。
(笑)
K先生
食べると美味しいという行動は強化されやすいんだけど、毎日のダイエットは続きにくいっていうね…。
ほむほむ
ほむほむ
さておき、海外の先生に聞いた内容なんだけど、アレルギー専門医と呼吸器専門医で比較すると、喘息のコントロールはアレルギー専門医のほうがいいらしいんだ。
えっ、それは、治療方針が違うからですか?
H先生
ほむほむ
いや、どうやらそうではなくて、アレルギー専門医は注射での免疫療法をするからのようなんだね。つまり、注射をしないといけないとなると、毎回、定期的に患者さんと顔を合わせるわけだね。すると、その前後は薬のアドヒアランスが良くなるということなんだ。実際、吸入薬のアドヒアランスをみた研究は、受診の前後だけ良くなって、受診間隔があくと、だんだん悪化するという結果になっているよ。だから受診回数を増やしたりがひとつの方法かもしれないね
なるほどなあ。
F先生
■親御さんといっしょに、どういう道を歩む?
それでも、アドヒアランスがなかなか保てない場合はどうしましょう?
H先生
ほむほむ
目標を最初に相談して決めること、そしてスモールステップですすめること、目標までの道筋を示すことなんかが大事だと思うよ。
目標までの道筋を示す。
K先生
ほむほむ
これは外来で最初に皆さんに話をする内容ではあるんだけど、例えば食物アレルギーなら、食べれるようになりたいとか、アトピーであればお肌が綺麗な状態になって他の人からアトピーと分からないぐらいにしたいとか、喘息であれば喘息発作がなくて入院とか救急外来受診の受診をなくしたい、とかになるよね。これは、短期から中期の目標になるよね。
たしかにほむほむ先生はよくそういうお話をしているなあ。
F先生
夜間しっかり寝れるようになりたい、とかもですかね。
H先生
ほむほむ
その通り! こういった目標を達成することで、お子さんだけでなく親御さんにもどういった利益があるのか、そういう目標の共有も大事だよね。もちろん、僕たちの最終的な目標はお子さんを良くしたいっていう話なんだけど、その目標はきっと同じだろうし、それには親御さんの協力は絶対に必要だからね。
ああ、とてもよくわかります。
F先生
ほむほむ
そのうえで、目標にいたるまでの治療目標をスモールステップに分けていく必要があるね。そして具体的なプランニングと、最終的な見通しをその時ごとに示すことが大事なんじゃないかな。スモールステップに関しては、次回の受信までの具体的な方策を紙に書いて渡すのも大事だろうね。
紙に書いて渡すのは有効ですよねえ。
K先生
ほむほむ
そして、中期的な目標として、アトピー性皮膚炎であれば、お父さんお母さんがこのようにすれば、お子さんの10段階で8あるような痒みが一か月後に2ぐらいになりますよ、というふうな話をしていくとか、長期的には、たとえば一年後にはステロイドが週1回になって、場合によってはステロイド外用薬を中止できて保湿剤だけになるとかになると予想できますよというふうな話をしていく必要性があると思うよ。
見通しを示すわけですね。
H先生
長期の予想をきちんとお話するってことか……。
F先生
ほむほむ
患者さんは良くなりたいと思って足を運んでいるわけですからね。もちろん、長期的な目標はなくて、短期間的によくなることだけが目標な方もいらっしゃると思うんだ。医者は得てして「治療をしたい」ものなので、医者が先走っちゃう可能性もあるのが注意点でもある。ただ、短期的にだけ良くなりたいと思われる場合は、中長期的なリスクとかデメリット、長期的な見通しの話をするといいと思うよ。
ほむほむ
食物アレルギーとかはお肌が良くないと、食物アレルギーの治療をするとすごいリスクは高くなっちゃうことはわかっているから(※)、皮膚が悪化しているうちは、食物アレルギーの積極的な(食べていくような)治療はしないほうが、むしろお子さんにとっては安全だよという話をするといいのかもしれないね。そして、受診のたびに、意思を確認するといいのかもしれない。※J Allergy Clin Immunol Pract 2019; 7:1912-9.
勉強になりました!
K先生
いつもありがとうございます。
H先生
またよろしくお願いします!
F先生
…とりあえず、こんな感じで、夕方のスモールセッションは終了ー。
一方的にしゃべりすぎたと思う、ほむほむであった…。
(ほむほむ先生のプチセッション、ときどき更新します! ご期待ください。)
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