ほむほむの朝のプチセッション(3)生後8ヶ月で卵を食べたあとのじんましん、検査する?しない?

【登場人物】

小児科レジデント1年目、F先生

F先生

アレルギー医・ほむほむ

ほむほむ

■ 2020/5/24 10:00 日曜日の医局で……。

医局で、ほむほむを呼び止めたF先生。
なにやら質問があるようです。

 

先日診察した患者さんに関して質問いいでしょうか?
F先生
F先生
ほむほむ
ほむほむ
いいよー。なんだろう?
生後8ヶ月のお子さんに関する質問です。

離乳食として、すでに卵を2回くらい食べたことがあるようなのですが、卵とお粥を食べた後に蕁麻疹が出てきたということで受診されて、抗ヒスタミン薬で蕁麻疹は消失したのです。

その後、僕の外勤先の外来を受診されて、アレルギーかもしれないので検査をしてくださいというお母さんのご希望がありました。

こういった場合、ただちに検査はするべきなのでしょうか?

F先生
F先生
ほむほむ
ほむほむ
生後8ヶ月のお子さんで、離乳食始まって2回目か3回目かぐらいの話なんですね。離乳食を食べて、どれくらいで蕁麻疹が出たのでしょう?
食べて1時間ぐらいです。
なるほど。そして今回は検査をしたほうがよいか、という質問だね。
でも、まず一番大事なのは病歴を聞くことなんですよね。だから今回食べた内容を、もうすこし突っ込んで聞いたほうが良さそうだね。
どんな料理形態でたべたんでしょう?全卵だったとか、固茹で卵だったとか、お粥に全卵生卵をいれて卵とじにしているとか。
柔らかく炊いた普通のお米と、加熱した卵だったとのことでした。
なるほど。アトピー性皮膚炎のもしくは乳児湿疹とかの既往はありますか?
アトピー性皮膚炎や喘息と言われたことはないということでした。また、ご家族の既往としてはお兄さんとお母さんが花粉症と言われていますが、食物アレルギーは特にないということです。生活環境としては床はフローリングでお母さんが毎日お掃除しているということでしたが、両親ともに喫煙者ということでした。

 

■アレルゲン性にもいろいろあるぞ

素晴らしいです。きちんとお話を聞いていますね。
その上で食物アレルギーに関しては、そのアレルゲン性を確認していかないといけないんですよ。
アレルゲン性…
卵アレルギーは、特に卵白アレルギーであることがほとんどなのですけど、加熱の温度99°から100°の熱を何分加えるかによって、アレルゲン性がぜんぜん変わるんですね。
卵が凝固する温度と、アレルゲン性が下がる温度は違うということがポイントです。
今回たべた卵が、お粥に溶き卵を入れてで加熱をした程度なのかもしれませんね。
例えば温泉卵とかもそんな程度の加熱になるのですけど、30分とか1時間とか時間をかけて加熱をしたとしても生卵と大差ないアレルゲン性になってしまうんですね。
ふむふむ…
たしかに、卵アレルギーの発症予防に関しては、年齢が低い、一般的には生後6ヶ月ぐらいから食べ始めた方が卵アレルギーを発症するリスクを減らすことができることができるという報告はあるんだ。
でも、その食べ方には条件があるんだ。
最近行われたメタアナリシスでは、むしろたくさん卵を食べ始めたりするとかえって予防ができないんじゃないか、1週間あたり4g以下までとか、そのほうが予防には働きやすいんじゃないかという報告もあるんだ。つまり、食べ始めるのは少なめのほうがいいかもという結果なんですね。

加熱卵を少量で早期開始すると、1歳時の卵アレルギーを予防できる(PETITスタディ): ランダム化比較試験

卵の離乳食早期導入と卵アレルギー予防:メタアナリシス

 

少ないほうがいいかもという結果…
F先生
F先生
ほむほむ
ほむほむ
そう。卵とじといった料理形態は、『しっかり加熱しました』だとしても、温度はそこまで上がっていないことが多いし、時間もせいぜい30秒とか1分とかだったりすることが多いんだ。だいぶ固まって見えても、アレルゲン性が高いことが多いんだね。

 

▶卵のアレルゲン性に関してのまとめ

 

この投稿をInstagramで見る

 

ほむほむ(@homuhomu_allergist)がシェアした投稿

それで、料理形態が重要なんですね。
F先生
F先生
ほむほむ
ほむほむ
そうそう。たとえば、卵白の中のアレルギーを起こしやすい蛋白質としてオボアルブミンという蛋白が全体の54%含まれていて、99°から100°の熱を20分かけるとアレルゲン性が0.1%以下まで下がるんですね。ですので加熱温度が低い、時間が短いなどあると、全く異なるアレルゲン性になっちゃうんだね。場合によっては100倍とかになっちゃう。
100倍!
F先生
F先生

 

■卵以外のことも。

ほむほむ
ほむほむ
そして、卵以外のことも聞かないといけないよね。
生後8ヶ月だから、卵以外の食べ物はいろいろも始まってるはずなんですね。
一般的には生後5から6ヶ月くらいには離乳食が始まって、例えばお野菜とか、肉や魚、小麦、大豆…当然今米も食べてたわけだよね。
この病歴を聞いた上で、この血液検査はしなくていいな、検査から外さなくちゃと考えて検査項目を絞っていくんだ。
だって、食べているなら、 血液検査より正確な食物負荷試験が終わっているという状況にあるんだからね。
そうか…
F先生
F先生
ほむほむ
ほむほむ
その次に、頻度を考える必要があるよね。
頻度?
F先生
F先生

 

■頻度についても。

ほむほむ
ほむほむ
例えば、先生が救急外来に咳があったり、鼻水があったり、お熱があったりするお子さんが受診されたとき、まずはどんな病気を考えるかな?
やっぱり風邪ですね。
F先生
F先生
ほむほむ
ほむほむ
いきなり”がん”とかは考えないよね?
もちろんそうですね。
F先生
F先生
ほむほむ
ほむほむ
たとえば最終的に”がん”があって免疫能が下がっていて風邪症状が出ている可能性は、ほんとうの意味ではゼロじゃないけど、いきなり”がん”を考えたりはしないよね。
それはもちろんです。
F先生
F先生
ほむほむ
ほむほむ
食物アレルギーも一番最初に考えるのは頻度が高い食べ物から考えていくんだ。
たとえば、乳児期は卵牛乳小麦で食物アレルギー全体の9割ぐらいを占めるんだ。
もちろん、今回食べたものが本当におかゆと卵だけだったのか言うこと聞かないといけないよね。実は他のものも初めて使いました、という話があるかもしれないからね。
もちろん、月齢的には『食べていないもの』もたくさんあるかもしれないよね。
ナッツ類であるとか魚卵であるとかそばであるとか甲殻類であるとか。もちろんこの年齢だ普通は食べないものだから、、まだ検査をしなくてもいいっていう考え方もあると思うよ。

食物アレルギーの診療の手引き2017

 

確かに一般的に、魚卵を食べたりはしないですね。
F先生
F先生

 

■採血の量についても。

ほむほむ
ほむほむ
僕らがよく行う、アレルギーの血液検査である イムノキャップっていう検査、1項目検査を増やすと何 cc 採血量が増えるかわかるかい?
どれくらいだろう…?1mlくらい?
F先生
F先生
ほむほむ
ほむほむ
だいたい、1項目で0.4ml(血清0.2ml) ぐらい必要になってくるんだ(病院や検査法により差はあり)。そして、保険でできる検査項目数は13項目までなんだ。
13項目のなかに収めていくように、病歴や重要度を考えていく当てはめていく必要があるんだね。
13項目というと、どれくらい採血が必要になることになるかな?
えっと、それなら5mlくらいですね。
F先生
F先生
ほむほむ
ほむほむ
そう、8ヶ月のお子さんで5mlってけっこう大変だよね。それ以外の採血も必要になるとすればなおさらだものね。
そういった意味では、最大13項目というのは結構リーズナブルといえるかもしれないね。病歴を聞きながら、その数に収めるようにしようね。
こまかい卵のアレルゲン性に関してはまた、みんながいる別の日に行うことにしよう。
了解です!
F先生
F先生

 

…こんな感じで、朝のスモールセッションは終了ー。

 

 

(ほむほむ先生のプチセッション、ときどき更新します! ご期待ください。)

この記事の注意事項・免責事項は『プライバシーポリシー』の『個々のテーマに対する注意事項や免責事項・ほむセッション』を御覧ください。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です