ほむほむの夕のプチセッション(7)いくらを食べてアナフィラキシー、魚との関係は?

【登場人物】

小児科レジデント3年目N先生

N先生

 

アレルギー医・ほむほむ

ほむほむ

■ 2020/6/4 14:45 医局で…

外来がおわって一息ついたところで、N先生が近づいてきました。

 

■ いくらを食べてアナフィラキシー。さて、どこまで検査をするか?

なんか、先生の記事になりそうな(笑)質問してもいいですか?
N先生
N先生
ほむほむ
ほむほむ
ん?自ら(笑)?
お願いします!

10歳のお子さんなんですが、アナフィラキシーが数日前にあったということで受診されています。いくらを初めて数粒くらい食べて、呼吸器症状や消化器症状、蕁麻疹があってアナフィラキシーらしいとのことでした。

そのときには救急受診はされなかったんですけれど、幸いなことに症状が治まっていたということで、私の外来にアレルギーの検査を希望されてきたんです。

N先生
N先生
それで、その時に何の検査を出そうかっていうところでちょっと悩ましいなって思ったのです。

いままで生魚とかあまり食べたことがなかったそうなんです。魚と魚卵はまず関係ないと思うんですけど…

それ以外はアトピーもないし鶏卵とか小麦とかのアレルギー歴はなく、ご家族でも特にアレルギーではないそうです。

N先生
N先生

 

■ 魚卵アレルギーと魚アレルギーは関連する?

ほむほむ
ほむほむ
病歴をきちんと聞いているなあ…。さすが。確かに今回は、いかにもいくらによるアレルギーで良さそうなんだけど、それ以外に何か食べていないんだろうか?
ざっくりとしか聞いてないんですけれど…。たしか全部食べたことのあるものっていう風におっしゃっていました。他の食べ物をたべるまえに、いくらから始めたそうなので、まずいくらだと思いました。
N先生
N先生
ほむほむ
ほむほむ
なるほど、たしかにその病歴ならいくらっぽいですね。今回はいくらアレルギーの可能性が高い、でも魚を普段食べていないので検査はどうしようということですね。実際、魚と魚卵ってアレルギーとしては関係するんだっけ?
魚と魚卵はアレルギーとしては関係ないという認識でした。
N先生
N先生
ほむほむ
ほむほむ
そのとおり。
でも同時に魚を食べたとすると、今のような季節だと魚は『うそアレルギー』がある可能性があるから要注意だよね。
「うそアレルギー」??
N先生
N先生

 

■ 魚は、特にこの季節に『うそアレルギー』がありうる。

ほむほむ
ほむほむ
本当のアレルギーではない『ヒスタミン中毒』は、青身の魚で起こることが多くて、モルガン菌という菌の作用でヒスチジンというアミノ酸がヒスタミンに変化して起こるんだ。今みたいに暑くなってくると、リスクが上がってくるから特に要注意になるんだね。

登田美桜, 他. 国内外におけるヒスタミン食中毒. 国立医薬品食品衛生研究所報告 2009; 127:31-8.

 

ああ、なるほど。季節も関係するのか…
N先生
N先生
ほむほむ
ほむほむ
ちなみに、食品の表示義務ってあるよね。必ず表示されるものが7品目、表示が勧められているものが21品目になる。これって、『アレルギーがありますか』というアンケート調査から導かれているんだ。あくまで自己申告だから、『本当のアレルギーではないアレルギー』が混じってくるんだ。
たとえば、本当の魚アレルギーは白身のほうが多いのに、ヒスタミン中毒を起こしやすいサバがはいってくるんだね。
へえー
N先生
N先生

 

■ 魚卵アレルギーで多いいくらやたらこは、検査結果に特徴がある。

ほむほむ
ほむほむ
それはさておき、いくらだね。
魚卵には卵白はなくて卵黄と卵膜のみで構成されている。そして魚卵でも圧倒的に多いのはいくらで、その次はおそらくたらこになるでしょうね。

2~3歳で新しく発症する食物アレルギーでは、魚卵が一番多いという報告があるけど、2~3歳で魚卵を食べ始めている子は少ないだろうから…なかなか対処も予防も難しい相手ではあるね。

食物アレルギーの診療の手引き2017

 

ほむほむ
ほむほむ
いくらアレルギーの予想するために特異的IgE抗体価は有用なんだけど、たらこは単独ではあまり役にたたなくて、いくら特異的IgE抗体価と比較してたらこ特異的IgE抗体価が大きく高いと症状がでやすいという報告があるよ。

アレルゲン的にはいくらとたらこは少し重なるんだけど、僕は臨床的にはそこまで重ならない印象を持ってるよ。だから、独立して負荷試験を考えたほうがいいかもしれないね。

タラコ負荷試験の陽性予測には、イクラ特異的IgEとタラコ特異的IgE抗体価比が有用である

 

比で考えるってことですね。
N先生
N先生
ほむほむ
ほむほむ
そうそう。
こんな、いくらアレルギーがあやしいときにも魚も検査をしたほうがいいんでしょうか?
N先生
N先生

 

■ 10歳であらたに魚アレルギー…あり得る?

ほむほむ
ほむほむ
今回は魚を食べていないということなんだけど、本当に10歳で魚をたべていないってことはあるかなあ…
そうですねえ。今度、もう一度よく聞いておきます。この年齢で、魚アレルギーを発症するってないんでしょうか?
N先生
N先生
ほむほむ
ほむほむ
魚じゃないんだけど、ピーナッツではこんな研究がある
生後5ヶ月から10ヶ月の乳児期からピーナッツを5歳まで食べ続けるとピーナッツアレルギーの発症リスクが10分の1になるという、LEAP試験という研究があるんだ。
そして、このLEAP研究に参加した人って640人もいたんだけど、その研究を5歳までやりきった方を、さらにピーナッツを1年間完全除去したという研究も行われたんだ。
すると新規にピーナッツアレルギーを発症した人は3人しかいなかったんだそうだ。恐らく5歳以降まで食べれるかどうかで、その食物を受け入れるかどうかって白黒ついてくるんじゃないかなと思えるよね。

ピーナッツを早期に摂取開始したほうがピーナッツアレルギーが減少する(LEAPスタディ)

乳児期に早期導入して予防した食物耐性は、中断しても維持される(LEAP-ONスタディ)

 

じゃあ、魚アレルギーを10歳で発症することはないってことですか?
N先生
N先生
ほむほむ
ほむほむ
それがそうとも言えないんだよね。それまで食べたことがあっても、手湿疹があって魚をよく扱う職業についたあとに魚アレルギーを発症したっていう報告もあるんだ。湿疹のある皮膚に魚のたんぱく質をしょっちゅうくっつけてしまったわけだ。

手湿疹のまま魚を扱った仕事を継続すると、魚アレルギーを発症しやすくなる?

 

経皮感作ってことですね。
N先生
N先生

 

■ 食生活が変わると、アレルギーも変わる?

ほむほむ
ほむほむ
そう。今回はアトピーもないという話だから、そうそう発症はしなさそうだけど…でも、この先の話題もあるんだ。

あくまである講演で聞いた話しで、なるほどなと思った内容なんだけど、最近魚の消費量って昔に比べて減っているよね?だから、かえって魚アレルギーが増えたんじゃないかって考察されていたよ。

ああ、そういう捉え方もありますね。
食べる量や機会が減ったために、免疫寛容がくずれたってことになりますね。食生活が変わったことで、アレルギーが増えるってことがある…という。
N先生
N先生
ほむほむ
ほむほむ
そういうことなんだろうね。
だから、そのお子さんが、本当に魚がきらいで『まったく食べていない』ならば、魚もチェックしたほうがいいかもしれないなあ…でも、生魚も焼き魚も、一般的には魚アレルギーだったら食べられないんだ。魚のたんぱく質は加熱に対してアレルギー的には強いんだね。ここは悩ましい点だね。でも、そこまで魚を食べないって難しいんじゃないかなあ…うむむ…。
(笑)でも、よくわかりました!次回よくお話を聞いておきます。ありがとうございました!
N先生
N先生

 

…こんな感じでまた、スモールセッションは終了ー。

 

(ほむほむ先生のプチセッション、ときどき更新します! ご期待ください。)

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