【登場人物】
小児科11年目、小児科専門医 K先生
アレルギー医・ほむほむ
■ 2020/5/29 16:45 1日の外来の終わりに…。
丸1日の外来が終わったあと、いつもの質問セッションをするほむほむとK先生。
■ 指舐めをして、どうしても治しにくい親指の湿疹、どうする?
うーんと、最近、外来で難しいなあと思っていることがあって。
K先生
ほむほむ
ほむほむ ん?なんだろう?
えっと、2歳未満で指舐めを繰り返しているようなお子さんで、例えばどうしても親指の湿疹だけなかなか良くすることができないお子さんは、どうすれば良くなるんでしょう?
プロトピック軟膏も使えませんし、ステロイド軟膏を塗ってもすぐ剥がれてしまいますよね?
K先生
ほむほむ
うーむ。その親指の湿疹はあきらめる。
え!?
K先生
■ 最後のピースをあとに残してみる。
ほむほむ
僕も、前はなんとかならないものかって、色々頑張ってみたんだけど、指舐めをしている間はむずかしいんだよね。そして、保護者さんに説明するのに、こんな話をすることにしているんだ。
どんな?
K先生
ほむほむ
手のひらの面積って、どれくらい?
えっと、1%でしたっけ。
K先生
ほむほむ
そう。じゃあ、指1本はどれくらいの面積?
うーんと、0.1%とかですかね。
K先生
ほむほむ
うん、きっとそれくらいだよね。指舐めをしている間は、軟膏も剥がれてしまうし治療はなかなか難しいことは確かだよね。
だから、残りの99.9%の治療をしっかりして良くなったら、99点以上になるわけだ。
そして、僕は『パズルの最後のピースを入れるのを楽しみに残しておこうか』ってお話しているんだ。だって、指舐めはいずれはしなくなるから、そのときに治療をしっかりすればいいんだから。
なるほどー!目からうろこです!
K先生
ほむほむ
どうしても100点が難しいテーマはあるんだ。でもリスクが高くなければ、こういったお話をすることで、患者さんも、そして僕たちも気持ちが軽くなる場合もあるんだ。
確かに。なんか私も気持ちが楽になりました。
K先生
■ 医者に言われるからする、ではなく…
ほむほむ
もちろん、治療において譲れないラインというのはあるよ。たとえば食物アレルギーにおいて『食べる』話をする場合は、皮膚の安定は必須だと考えているから、毎日の丁寧なスキンケアは落とせないよね。
そうですよね。
K先生
ほむほむ
そのスキンケアは、どうしてもご家族にお願いしないといけないよね。
ほむほむ
そのお願いするときに、患者さんが『医者が言うからスキンケアをする』というモチベーションでスキンケアをするようになっちゃうと、医者が敵になってしまうかもしれない。毎日の苦労を『言われたからする』となるとね…。
先生も、子ども時代に『勉強しなさい』と親に言われ続けたときとかに、だんだん腹が立ってきたりしなかった?
確かに、そんな感じになっちゃいますね(笑)。
K先生
ほむほむ
あくまで毎日のスキンケアは、お子さんの安全性を守るために重要な治療の一環だよね。牛乳の免疫療法なんて、皮膚が不安定な状況で免疫療法を始めるとリスクが高くなるんじゃないかという報告もあるしね。『お子さんの安全を守るために、スキンケアを協力していただけますか?』というふうな説明の方がよりいいんじゃないかと思うよ。
お子さんの安全性を守るため…。
K先生
ほむほむ
そう。実際にそれが事実だから。医療は、安全性と効果のバランスを考えていかなくちゃならなくて、その際に絶対に落とせないのが安全性だよね。安全性をないがしろにして効果をもとめちゃいけないと意識しないと危ないものね。でも重症になればなるほど、安全域ののりしろは小さくなってしまうから、なかなかそのマネージメントが難しくなってくるよね…。
ほむほむ
その安全性ののりしろを大きくするために、保護者さんへの協力をお願いする、そういう説明は重要なんじゃないかな。自動車教習所でとなりに乗っている指導員は、もし事故をおこしたら一緒に怪我をしてしまうでしょう?必要なときはブレーキを踏むにちがいないよね。そしてそれは、習っているひとの安全も守ることにほかならないし、この場合は後席にお子さんも乗っているんだから。もちろん、すべてのひとに伝わる普遍的なことばや方法はないから、そのたびに変えることでもあるだろうけどね。なんか脱線しちゃったけど。いいかな?
よくわかりました!ありがとうございます!
K先生
…こんな感じでまた、スモールセッションは終了ー。
(ほむほむ先生のプチセッション、ときどき更新します! ご期待ください。)
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