【登場人物】
ST先生 9年目のアレルギー専攻医
KR先生 4年目のアレルギー専攻医
G先生 アレルギー専門医
アレルギー専門医ほむほむ
コロナ下で集まれなくなったため、始まったZoom勉強会の第2回目。つづきます。
目次
鉄火巻きを食べて症状がないのに、『マグロのカマ』でアレルギー症状?
ほむほむ
では、ST先生、なにか最近こまったこととか、話題提供などありませんか?
そうですね…。そうだ、ちょうど調べてみようかと思っていることがありました。
多抗原でアレルギーのあるお子さんですが、以前、鉄火巻きをたべて大丈夫だったそうなのですけど、別の日にマグロのカマを食べたらアレルギー症状がはっきりあったというお話を受けまして…。なにかお考えなどあればおしえていただきたいです。
多抗原でアレルギーのあるお子さんですが、以前、鉄火巻きをたべて大丈夫だったそうなのですけど、別の日にマグロのカマを食べたらアレルギー症状がはっきりあったというお話を受けまして…。なにかお考えなどあればおしえていただきたいです。
ST先生
ほむほむ
うーん、これまた難しいテーマが来たなあ…魚アレルギーの抗原性に関する話だね。
そうだなあ…、いくつか要因を考えることができるかもしれないね。挙げてみよう。
そうだなあ…、いくつか要因を考えることができるかもしれないね。挙げてみよう。
背側と腹側、アニサキス、エラの周辺の”ヒスタミン産生菌”…、いろいろ考えてみる。
ほむほむ
まず、魚の抗原性は、背側と腹側の筋肉でことなる可能性が指摘されているんだ。実際には量に応じて変わるとはいっても、食べる量でかわるほうが大きい気はするけど…すこし意識してもいいかもしれない。
へえー。
ST先生
ほむほむ
あとは、魚の腹側でアレルギー症状がある場合、魚アレルギーではない場合があるよね?なにがあるだろう?
なにかあったっけ…?
ST先生
ほむほむ
まずひとつは アニサキスです。マグロはサバやカツオなどほどはいないと思うけれど…アニサキスはどちらかというと腹側に多いからね。
ほむほむ
さらに、“本当のアレルギーではない”というもう一つ要因があるよ。なんだろう?
ヒスタミンでしょうか?
ST先生
ほむほむ
そのとおり!
実は、ヒスチジンをヒスタミンに変換する“ヒスタミン産生菌”はモルガン菌といってエラの周辺に多くいるといわれているんだ。つまり、カマの周辺にはヒスタミン産生菌が多い可能性があるよね。今回の話はこれなんじゃないかなあ…
実は、ヒスチジンをヒスタミンに変換する“ヒスタミン産生菌”はモルガン菌といってエラの周辺に多くいるといわれているんだ。つまり、カマの周辺にはヒスタミン産生菌が多い可能性があるよね。今回の話はこれなんじゃないかなあ…
▷J Food Prot 2001; 64:1035-44.
なるほど!
ST先生
ほむほむ
ところで、最近報道で、“だしパックでアレルギー”という話があったのを知ってる?
ありましたね!保育園での話でしたよね。
G先生
ほむほむ
そうです。ちょうどネットで記事を書いたところなので、共有します。
▷本当に『だしパックの煮すぎ』で、ヒスタミン中毒が起こったのか? 医師が考察
ほむほむ
鮮魚でもヒスタミンは存在するんだけど、症状が出るほどは存在しないということになるんだ。
ヒスタミン中毒とI型アレルギー。
ほむほむ
ヒスタミン中毒に関しては、K先生大丈夫かな?
知ってます!
KR先生
ほむほむ
では、I型アレルギーってどういうメカニズムで起こってくるでしょう?
ええと…どうだっけ…?
KR先生
ほむほむ
では、リンクをひらいてもらっていいですか?図がありますよね。
記事から引用。仮性アレルゲンとI型アレルギー。
左側が仮性アレルゲン、右がアレルギーのメカニズムです。
IgE抗体はふたつセットで働きます。そして肥満細胞(マスト細胞)に作用して、その中から、ヒスタミン、トリプターゼ、ロイコトリエンといった物質を撒き散らします。
そういった“免疫的なメカニズム”が働いたときにアレルギーというんですね。
IgE抗体はふたつセットで働きます。そして肥満細胞(マスト細胞)に作用して、その中から、ヒスタミン、トリプターゼ、ロイコトリエンといった物質を撒き散らします。
そういった“免疫的なメカニズム”が働いたときにアレルギーというんですね。
ほむほむ
そのうちのひとつであるヒスタミンがじんましんを起こすことになります。たとえば皮膚のプリックテストで“陽性対照”であるヒスタミンを使うと、膨疹ができますもんね。
仮性アレルゲンが本来、薬理活性物質というのが正式な名称になるけど、“仮面をかぶったアレルゲン”みたいに、仮性アレルゲンというと伝わりやすいみたいだから、よく使われるよね。…この流れで、ST先生どうでしょうか?
加熱をするとどうなのでしょう?卵みたいに下がりませんか?
ST先生
ほむほむ
ヒスタミンやアニサキスは、加熱をしてもアレルゲン性はさがりませんよね。加熱をしてアレルゲン性が大きく下がる…という蛋白質は思ったより少ないんですよ。食物アレルギーで多い卵がその性質を持つので、そんなイメージがあるかもしれないけどね。魚でアレルギーを起こしやすい蛋白質である“パルブアルブミン”も加熱に強いんです。
魚アレルゲンの考え方。
ほむほむ
日本で食べられている魚は300種類以上いるらしいんだけど、ある魚で症状があると複数で症状があることが多いんです。パルブアルブミンの相同性が7割とかあるからね。だから、”マグロだけ”というのはかなり珍しいし、ヒスタミン中毒を疑う理由になる。そのパルブアルブミンの相同性に関しては十分な研究が行われているとは言えないんだ。なんせ300種類もいるからね…
たしかに…汗
ST先生
ほむほむ
まず魚に関しては、まずは硬骨魚綱と軟骨魚綱にわけられている。このふたつはアレルゲン性としても大きく違いがあることまではわかっているんだ。でも、硬骨魚綱はふだん僕たちが食べている魚のほとんどにあたる。軟骨魚綱は、サメとかエイとかになるんだよね。
▷J Allergy Clin Immunol Pract 2019; 7:500-8.e11.(日本語訳)
あまり食べないですね。
ST先生
ほむほむ
そうだよね。でも、郷土料理で“かすべ”というエイの一種がいて、負荷試験では陰性になりやすいといった報告がみられるね。
ほむほむ
なお、パルブアルブミンは水溶性なのでゆがいて煮汁をすてると多少アレルゲン性が下がるという考え方があるんだ。
一方で、加熱に関しては強いという話をしたけど、ツナ缶だと高温・高圧で調理するので食べられるようになるという話題もあるよね。でも、実際には負荷試験をするとせいぜい2割ぐらいしか食べられないという報告もあるよ。
一方で、加熱に関しては強いという話をしたけど、ツナ缶だと高温・高圧で調理するので食べられるようになるという話題もあるよね。でも、実際には負荷試験をするとせいぜい2割ぐらいしか食べられないという報告もあるよ。
▷Ann Allergy Asthma Immunol 2011; 106:494-501.
難しいんですねえ…。自分でも調べてみます!
KR先生
ほむほむ
さすがです!がんばってね!
(ほむほむ先生のプチセッション、ときどき更新します! ご期待ください。)
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