【登場人物】
小児科11年目、小児科専門医 K先生
アレルギー医・ほむほむ
■ 2020/5/21 16:45 丸1日の外来が落ち着いた夕方……。
ショート・ディスカッションを、スマホの音声変換機能で収録してみようと試みるほむほむとK先生。
■K先生、ナッツ系の指導が気になる。
生後2ヶ月で皮膚が悪化した患者さんがいらっしゃったとして、皮膚の治療をしながら、最初のアレルギーの血液検査結果などをみて…生後5~6ヶ月から離乳食をちょっとずつ始める……というケースで。
「まだ食べていない食べ物に関して、どれもこれも血液のアレルギー検査で陽性」というお子さん、多いですよね。卵やニュウだけでなく、魚とか、鶏肉とか豆腐とか。
食物アレルギーの発症を予防するために少しずつ、離乳食を食べ始める方向で進めたとして、最終的に1歳半すぎくらいにはだいたい食べられるようになってくるわけですけど…
ナッツ類は誤嚥も気になるから、3歳くらいまでは始めないことが多いと思うんですけど……どう説明すればいいのかなっていうのいつも悩むんです。
例えば、そばを離乳食にとお話すれば、みんなびっくりしそうだよね。でも、そばを離乳食として食べる国だってあるんだよね。たしかロシアだったと思いますけど、カーシャっていうお粥みたいな感じの食べ物を、離乳食として食べたりするらしいんだよね。
でも、そばを離乳食として食べ始めても、それはそれで問題ないわけだよね。伝統的に。ピーナッツに関してだって、イスラエルではもともと離乳食として早めに導入していた国だったから、ピーナッツを早めに開始するという研究であるLEAP試験が生まれたわけだし。
もともと文化的にその食べ物をよく食べるかどうかというのも大事な視点になるだろうと思う。日本ではもともと、離乳食としてはナッツ類は食べてこなかったわけだから、心理的な抵抗もあるし、なにより、離乳食に導入できるような料理形態を探しにくいという文化的背景があるということなんだね。
※ほむほむ注
『生活管理指導表』は、アレルギーのあるお子さんが学校や園に提出しなければならない書類のことです。
でも、たとえば韓国では、ナッツ類のアレルギーの中ではクルミやピーナッツの次に松の実が多いみたいなんだ。
やっぱり食文化が違うんだろうね。だから、結局、実際食べてみるという食物負荷試験が必要になるんだろうけど、負荷試験はどうしてもリスクもあるしマンパワーも必要だよね。だから1歳未満で負荷試験をするなら、どうしても卵・乳・小麦とかを優先せざるを得ないものね。
あるナッツでアレルギーの症状がある場合に、12種類のナッツ類の負荷試験をして確認するという研究があるんだけど、他のナッツ1種類以上に症状が出てしまうケースが6割程度はでてしまうんだよね。でも、最終的に9種類(中央値)のナッツを導入することができたんだそうだ。
だから、全部大丈夫とも大丈夫でないともいいがたいんだよね。
とくに、うちみたいに重症化してから受診される方がおおいと、感作の程度も強くて、どれもこれも血液検査では陽性だったりすることがあるよね。そうなってくると卵・乳・小麦や肉や魚を優先してどうしてもナッツ類は後回しになってしまいがちだから、1歳を超えてしまうことも多いよね。
■負荷試験の優先順位と、開始年齢について。
ピーナッツ300 mgでは食べられるけど、3000 mgは食べられないという子どもで、300 mgを1年以上食べると、3000 mgをかなり食べられるようになったという研究だね。
年齢がもっと高くなるよりは3歳未満ではじめるほうが、アレルギー側からみたリスクは低いだろうと思うよ。免疫療法は、年齢が低いほうがリスクが低めという報告もあるしね。でも、ピーナッツ以外のデータは見当たらないなあ。
だから、個人的にはピーナッツバターで開始することが多いね。前はアリサンっていうメーカーをamazonで購入してもらっていたんだけど、最近三育っていうメーカーを教えてもらったので、そちらも勧めているかなあ。普通に購入できるピーナッツバターは、どれくらいピーナッツが入っているのか予想できないしね。
もちろん、慎重に…だよ。適当に始めるとリスクがあるから。
そして、ピーナッツ以外にもその考えを勧めるかどうかは、『わからない』としかいえないなあ…
■アーモンドとか、他のナッツは?
クルミやカシューナッツは適当な料理形態が見当たらなくて、3歳以降までまって負荷試験をすることが、僕は多いですね。
最近コンポーネント検査が保険で検査できるようになったので、もし1年以上検査をしていなければ、再検査をしてから考えるだろうけど。
アレルゲンコンポーネントの測定意義(日本アレルギー学会)
そういえば、クルミとペカンナッツがほとんど交差するってきいたんですけど、ペカンナッツがどんなナッツなのか、買って食べてみました。たしかに、見た目がクルミとそっくりですね。美味しかったです。
…こんな感じで、いつもの夕方のスモールセッションは終了ー。
(ほむほむ先生のプチセッション、ときどき更新します! ご期待ください。)
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